読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

‪喧騒から、少し外れたところに、住んでいる。緑が、多い。何か物足りないと思ったら空が空であることですなわち空を見渡せてしまうことは違和感で、わたしの空にはいつも遮る山があった。連なった山。山らしくない山。その山らしさの消失は、何年も何年も見慣れてしまったことからきているのだろうか。‬


駅には、シュークリームのお店。いい匂いがする。そのあまーい匂いがわたしの鼻腔を満たしたとき、わたしの心は、満ちた、と感じる。


そういえば、高校の通学の途中にもケーキ屋さんがあった。毎日そこを通って、朝の仕込みの匂いを嗅いで、ひとりでににやにやとして、通学のちょうど中間あたりにあったその地点で残りの通学路への気合を補填したものだった。


そんな懐かしさに、なんとなく、また通学の途中にシュークリームのお店があることが、何かの縁であるような、そんな気持ちになる。

わたしとシュークリームは、分かち難く結びついている。月と名を並べたいがあまりすっぽんになりすますような気持ちで、わたしは、シュークリームに恋い焦がれた気持ちを抱く。焦がして焦がして、クリームブリュレも作りたいね。


気持ち気持ちと並べたためにちょっとこの三文字に酔った。

まだ、取っている講義の全てを受けられては、いない。電車に揺られ、きちんと校舎に出向いて、せめて一コマだけ受けるでも精一杯。


昨日は故郷のちょっとしたお祭りがあって、知人で会いに行きたい人がいたから「魂だけ伺います」と拗ねていたのだけれど、夕方にはなんだかやたらと眠たくなって、自習室で少し、居眠り。

その夜その知人から、「なんかもやっとしたもの見えた!」と興奮気味に連絡をもらう。ぼんやりその字面を眺めていると、はたと、その時間は寝こけていた時間ではなかったかと、思い至る。

もしかして、本当に行けたのかもね。ああせめて、それならせっかく会いに行ったというのに会った記憶が保持されていないのが惜しまれる。

「次は肉体も飛ばせるといいね!」

ほんとにそうね、どこでもドアもいらないわね、と思いながら、修行しますと返信してそれから、魂だけ行くと私が言ったことを覚えていてもらえたことに、今更気がついて嬉しさが弾む。ぽよんぽよん。


ぽよんぽよんぽよん。昨晩は、ようやくきちんと食堂の食事を摂った。一歩ずつ、一歩ずつ。蟻の一歩であっても、誰にも認めてもらえないにしても、わたしはこの一歩をきちんと自覚しよう、と、思う。



昨日はメイク用品を買い足した。行けないと思って受けるのをやめた、講義の時間に。

花の入った、リップバームが可愛らしいったら。発色もいいし、保湿力も高い。それにしても、唇に色がついただけでぐんと印象は変わる。香りつきのものはとことん苦手なわたしだけど、ライチの香りは今にも甘い味がしそうで、気分が上がる。


そうそう、それに、前から気になっていた新しいマスカラと、そして偶然見つけた月のイヤリングを買った。その他、諸々。

イヤリングは片方が月で片方が星で、しかも長時間つけても痛くないようにデザインされていたから、これは、と思ったのだった。

わたし、多分、これに守ってもらえる。 なんて、そんなことを。



今日もお昼頃に起き出して、一コマだけはなんとか受けようと、予備校に向かう。いってきますね。ぽよりん。




*すっぽんと名乗れば、近づける気がしたの  ふみ