散歩に出た。
自分のこと、生活のこと
いのちのこと、日常のこと
人生のこと、欲望のこと
ぐるぐるぐるぐる、とりとめもなく考えたかったから。
◇◆◇
わたしには大好きなある小説があって、大好きが故にとても読み返
その本を。
なんだかんだようやくもう一度読む覚悟を固めたはいいもの、上・
今ならまだ引き返せる。もう読むな。
わたしはその理由を知っている。またこれを読み終えたら、どれだ
最後の最後のページを閉じた瞬間、この世界がわたしの生きる世界
ファンタジー冒険もの、とでも言えようその物語は、あの頃読んだ
逃げ道を。
逃げ道を探している、たぶんわたしは、今の、わたしは。だって上
逃げ道が欲しくて、けれど読み終えた時の世界の存在しない実感を
旅人の物語。
読みながらわたしは、どうして毎日成すことにこんなにつまらなく
毎日、結局は、家に帰るからだ。
その日どんなに進歩なことをやり遂げたとしても、家に帰るのだ。
とんぼ返りだ。
旅人は、毎日、歩みを進めて、進んだところで寝て、また次の日進
とんぼ返りするだけの毎日。結局なあんにも、進んでいない毎日。
そんなこともあって、夜、ただただ歩きたかった。
イヤホンを持たずに、外に出た。
そうそう、その小説は、結局、上巻を読み終えてから恐ろしく消沈
飽きたのと違う。満足したのでも違う。怖くなったのとも、違う。
訪れたのは、唐突な、終わるべく終わる感だった。ヘンな感じ。
散歩の話に戻ろう。
ぐるぐるぐるぐる、頭を混沌とさせるはずだったのに、なんだか頭
本屋の入っているまあまあなスーパーを通りかかった。一瞬の逡巡
いや、良かったというべきなのか。実際のところ、どっちでもない
スーパーは、あまりに生活感がごった返していて、先ほどの小説に
椅子とテーブルがあって休憩できるスペースへ行き、腰をかけた。
ココアをストローでちゅうちゅうと吸う。後ろでは、予習をしてい
そういえばつい最近にココアを飲んだんじゃなかったか。ならなお
◇◆◇
それにしても、と、思う。
昨日一昨日はちょっとした合宿で、昨日は鍾乳洞やら滝を見るため
昨日、ようやく合宿が解散して、それでも同じ路線は同じ路線で固
なんてひとりは素敵だろう。やっぱりわたしは、ひとりでいるのが
女の子たちの、一緒にまとまっていないとイヤ、ひとりでいるのは
ひとりでいればいいじゃないか。知り合いのいないことなんて、友
夜道を歩くには、色気も可愛さもない服装が一番だ。ぼさぼさの髪
歩く姿勢は、しゃんと。
いかなるときも、座るときも食べるときも、姿勢だけは綺麗でいた
顔中のソバカスがコンシーラーで隠れなくても、汚いいちご鼻が顔
きれいにラインを見せてくれるワイヤー入りのブラじゃなくて、ぺ
まあ、そんなことはほんとは、どうでもいいんだけど。
まあ、そんな格好だから、きちんと身支度をした日は寄ってくる美
◇◆◇
結局頭混沌とんとんとんとんのお散歩は叶わず、所帯じみたスーパ
100円のココアが甘かった、それだけの、外出だった。それ以上
でも、美味しかったけどね。ココア。100円だったし。
*月だってさ、月だよね ふみ