何をするでもない毎日。


音楽をきくでもない。

映画をみるでもない。

なんの生産もない、ただの怠惰な毎日。

自分の中で地球儀が、高速回転しているだけの毎日。


わたししかいない世界が営まれる毎日。


わたししかいない世界で、存在しないわたし以外が、よってたかってわたしを消そうとする世界のまいにち。

いっそ、穏やかと言ってもいい。


わたしの好きな、あの子やあの人はたぶん、重たい地球儀を、よいしょよいしょと、隣にいる誰かと談笑しながら回している。


わたしだけの世界。

わたししかいない世界。

誰もわたしにならない世界で、わたしは誰にもならない世界。


世界はひどく、整然としている。

わたしはそのことに、ただ、いけない、という感覚だけを、抱く。絶望でも罪悪感でも焦燥感でもなく。ただ、あ、だめね、そういう。


川岸に腰掛けているのか、河原で夢をみているのか、川の流れにのっかっているのかさえ、わからない。


わたしはどこへゆくんだろう。

どこへ、どんなところへ。誰と。どうやって。どんな風に。


わたししかいない世界。

わたしだけが触れることのできる地球儀。わたしの言うことしか聞かない地球儀。

そう遠くないうちに、粉々に砕かなくてはいけない地球儀。


世界の羅針盤が一斉に狂い出して、みんながわからないままわからない方向へ進めばいい。おでこをぶつけてしまったりして、あちこちで喧嘩が起きる。


負けたくない、とわたしは願う。

まけたくない。何に? わからない。ただ静かに、わたしは屈しない、と、強く念じる。まけたくない。


そうして、そうした、そうするときに、わたしは誰かという羅針盤を手にしている。そんな祈りみたいな呼吸をする。

そのときわたしを、羅針盤と呼ぶ誰かがいたらいい。壊すくらい握りしめたらいい。わたしはすぐにどこかへ行ってしまうわよ。


そう、そうなったときのために、わたしは針を磨いておく。右手にクリーム。左足にローションを。

そうして誰かの行き先を指し示す指が、しなやかに鞭を打って波になればいい。船に乗ってそのままどこかへ導いてほしい。


引力は、きっと近いうちに消滅するでしょう。そうしたら、船を漕いで地球儀の裏っ側に来たとき、遠慮なく落っことして。宇宙のずっと遠くへ。さよならって。

星になるね。