食生活の改善を決意したその日の夜にごりごりのジャンクフード。笑っている。ちょっと胃は不服を申し立てている。1日分のビタミンを謳った実質ただの砂糖水を片手にPCに向かう。時計は22時を過ぎている。寝起きに立てた生活改善計画によると、私は1時間前にはとっくに就寝している。

リセットしよう。環境もこれからも気持ちも何もかも。できないと思ってる。でもやる。部屋をきれいにしたい。早寝早起きをしたい。筋トレをしたい。毎日湯船に浸かって、洗濯物を溜めたくない。一気に。唱えて。あっさりくじけるだろう。すぐに疲れちゃう。そのときは全部投げ出しちゃえばいい。リセットしたいという私の気持ちを尊重してあげたい。

カタカタと小気味よくキーボードが鳴っている。その調子すらあの人が笑っている。

箸が転んでもおかしい年頃の少女たちが競うように喋っている。雑談は楽しい。へんてこな絵を描いてげらげら笑い合う。楽しい。

今日私の話したい好きな話をした。聞いていた相手はしばらく苦笑いをして、それから、「むずかしいね」と言った。難しくなんかない。ただの楽しいおはなし。「こういうこと?」という返事は素っ頓狂で、私はなんと返したらいいのか分からず苦笑いをしていた。

口を開くと自己中になる。私が私がってずっと話してしまう。言語の血液に穴が空いている病気を持っている。私は言葉を排出しないと死んでしまう。一分一秒たりとも、休むことなく。

話題が苦手だ。そんな他人の興味持てるような話題を持ち合わせていない。女の子らしい趣味もオタク気質の趣味も会話をするには感情がはみ出て有り余る。別に自慢をしているわけじゃないけど、楽しいお喋りにここまでのエネルギーは求められながち。私は喋りたい。コスメの話お洋服の話。雑誌の話ダイエットの話。アニメの話ゲームの話。それでもやっぱり、表現の話社会の話生きることの話。私から表現は切り離せないのだな、と思う。その脱皮として生み出される作品に、欠片も価値がないのだとしても。

肌荒れが酷いのにメイクが好きだ。我慢していても結局化粧しちゃう。コスメを見ているのは楽しい。何時間でも使える。一過性の美しさが今すぐ手に入るのと、3年我慢したらとんでもない美貌を手に入れられるのと、どっちか選べと言われたらどっち取ります? ほんとは顔面に必要最小限のもの以上をべたべた塗ってるのは結局そういうことなのだけど、やっぱりメイクやめられない。たのしいもん。

ファッション誌が欲しくて1週間くらいうろちょろしている。慎重になりすぎてどれもしっくりこない。もういいから装苑を買った。

うつくしく、もがく。そういうことを、必死に描いた作品がある。私の大好きな監督の作品に。この人がいる世界ならじゃあ私は生きてみせようじゃないかと18の夜に唇を噛ませたそのひと。実際のところ、世界はうつくしいのかどうか。うつくしくないのかもしれない。わからない。ただまだ見たことのない誰か・会ったことのない何かを探し求めて生きている。作りものじゃない感覚と感情。世界は憎らしいこと心ばらばらにすることに溢れているけれど、ここはまだ地獄じゃない。私は生きることができる。たとえどんなにつらくても、苦しくっても。

後ろ向きに文章を書いている。誰にもジャッジなんかさせないのに、いつも後ろ指を指されているような気持ちで書く。正解なんかないのに、間違ってる気がする。詰り否定される前提をどこかで抱えているのに、正義がある。見つけてほしい。何に? 分からない。それでも書いている。だって私の言語の血管には穴が空き放題だから。かがり火にするためといつか私が言っていた。かがり火? とんでもない。そんな燃やしている悠長な時間はない。言うなれば二酸化炭素だ。たとえ人から見て醜くても稚拙でもこれは私の生きた痕跡だ。足跡よりアルバムより痛切で生々しい、秒刻みの記録だ。そんな大仰な、と笑う奴こそ私が笑ってやる。

とどきますように。そこに、届けたい明確な何かは存在していないかもしれなくて、それでも私が私の中で完結することを拒み発信し続ける。ぼくはここにいるよ。あの人が言っていた。私が伝えたいのはそんなことかもしれない。わたしはここにいるよ。生きていて、存在していて、だから誰か知っていて。きっと、そんな気持ち。

埋没するのは最初からなかったのと同じで、それが怖いから私は見つけてって叫ぶんだろう。私がここにいたことを、誰か見ていて。存在の否定を恐れる気持ちが何よりも自己愛を示している。私が私を必死に守ろうとしていること。私の騎士はつまるところ永遠に私を超えることはないのだと思う。

新年の一桁目が終わる。このことがなんだか、とてつもない区切りに感じられて切なくなる。どうでもいいような他人の家の風貌に胸が締め付けられる。このことを話しても望むとおりに受け止めてくれる人はいないんだと思う。そういう積み重ねで、生きていく。たとえ明日死にたくなっても、来月にはヤク中になっていても、今リアルタイムで瞬間瞬間に私が抱く感情の全てを、私は尊いと思う。